労働基準法その他関係法令と在宅勤務
2008年7月に厚生労働省から発せられた通達の中で在宅勤務とは「労働者が労働時間の全部又は一部について自宅で情報通信機器を用いて行う雇用形態をいう」と定義付けています。
労働基準関係法令の適用
在宅勤務には、労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法、労働者災害補償保険法等(以下「労災保険」という)の労働関係法令が適用されます。
労働基準法の注意点
ア.労働条件の明示
使用者は、在宅勤務を行わせる場合には労働契約の締結に際し、就業の場所として、労働者の自宅を明示しなければなりません。
イ.労働時間
テレワーク(在宅勤務等)を導入するに当たって、この在宅勤務者の労働時間の把握をどのように行うかは大きな課題の一つといえます。
在宅勤務については事業主が労働者の私生活にむやみに介入すべきではない自宅で勤務が行われ、労働者の勤務時間帯と日常生活時間帯が混在せざるを得ない働き方であることから、一定の場合には、労働時間を算定し難い働き方として次の(1)から(3)のいずれの要件も満たす場合には「事業場外みなし労働時間制」を適用することが可能であるとされています。もちろん、在宅勤務者の労働時間を算定することが可能である場合には通常の労働時間制が適用されますし、又、他の労働時間制(フレックスタイム制等)を適用することもできます。
(1) | 当該業務が起居寝食等私生活を営む自宅で行われること | ||||
(2) | 当該情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態におくこととされていないこと
|
||||
(3) | 当該業務が、随時使用者の具体的な指示に基づいて行われていないこと
|
ウ.労働安全衛生法上の注意点
使用者は在宅勤務を行う労働者に対して必要な健康診断や、雇入れた際には必要な安全衛生教育を行う必要があります。その他、在宅勤務を行う労働者に対して厚生労働省から示されている「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン」等に留意するとともにその内容を周知し必要な助言を行うようにしましょう。
エ.労災保険上の注意点
在宅勤務中に業務が原因で生じた災害は、労災保険の保険給付の対象となります。(自宅における私的行為が原因であるものは業務上の災害とはなりません)
実務的には、在宅勤務中に発生した災害については労災認定をする場合、業務と私生活が混在している為に、それが業務中に発生した災害か否かの判断は非常に難しくなり、その災害が業務に起因して発生したものであるのか十分に調査を行ったうえで判断されることになります。
オ.雇用保険上の注意点
在宅勤務者については事業所勤務労働者との同一性が確認できれば原則として被保険者となります。この事業所勤務労働者との同一性とは、所属事業所において勤務する他の労働者と同一の就業規則等の諸規程(その性質上在宅勤務者に適用できない条項を除く)が適用されることをいいます。尚、この事業所勤務労働者との同一性を判断するにあたっては次の点に留意した上で総合的に判断されます。
- (1)指揮監督系統の明確性
- (2)拘束時間の明確性
- (3)勤務管理の明確性
- (4)報酬の労働対償性の明確性
- (5)請負・委任的色彩の不存在
実務的には上記の要件に該当するか否かは「在宅勤務実態証明書」を管轄のハローワークに提出して被保険者であるかどうかの確認を受けることになります。
事業主様の良きパートナーとして原田社会保険労務士事務所は信頼できる身近な相談相手です。在宅勤務についてお気軽にご相談ください。
![]() ワーク・ライフ・バランス |
![]() テレワーク(在宅勤務) |
![]() 就業規則作成上の注意点 |